Dentalism 25号
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までやってきたやり方のどこかを「カエル」しかない。一番変えるべきところは、ありきたりな部分。ありきたりな部分を変えると、どんどん変わっていける。 見落としがちなのは、受け取る側の視点です。その情報がいい情報であれば相手はいつでも何でも受け取るのかというと、それは違っていて、相手は「欲しい物」を「受け取りタイ」ときに受け取るもの。そうした受け取り「タイ」をどうやって作るかがポイントです。 誰だって健康でいたいのは当たり前だと思ってると、うまくいきません。だって、みんなわかってるのに防げるはずの病気になるじゃないですか。健康でいることが当たり前だと思っていて、崩れてみて初めてわかる。それを崩れる前から気がついてください、というのはなかなか難しいこと。 相手の「こうありタイ」という気持ちを、こちら側から見つけ出して引き出したり、植え付けてあげたりする。相手の中に漠然とあるのに気づけていない「タイ」を刺激して、「受け取りタイ」に導いてあげる感じで。――「カエル」と「タイ」が二大テーマなのですね。北折 僕がやっているのは、きちんとした正しい情報を「おいしい話」として、食いつき「タイ」ような形に「カエル」お手伝いです。 どうしたら食いつき「タイ」話になるのか。それは「意外感」と「お得感」、ほぼこの二つに尽きます。ありきたりな面白くもない話を意外感で聞こえるような話にしてあげたり、本当はごく普通に真面目にやっておくべきことを、めっちゃいい方法、めっちゃお得な作戦がありますよ、というふうな聞こえ方に変えていく。――具体的な事例をご紹介いただけますか。北折 例えば、これは愛知県のある町の「子宮がん検診」の事例なのですが、女性は20歳から5年に一度、がん検診のお知らせがあります。その時に、無料ですから、若い人でもがんになっていますから、と呼びかけても、ほとんど来ないわけですよ。それが、僕の研修を受けた翌年にどうなったか。なんと、保健センターからの封書をあけると、花嫁さんの写真に「あなたへの大切なメッセージその日のために」とだけ書かれたチラシが出てくるわけですよ。 こうすることによって「ええっ?」という強烈な何だろう感と共に、裏を見なきゃという気持ちになる。本人が裏を見たいと思い、情報を取りに行くから、内容が思いっきり頭に入ってくる。 このチラシに変えたら、2人しか来なかったのが20人になりました。という話を鳥取県でしたところ、次の年にそちらの「がん検診」チラシには、女性のシルエットに「女の祭り」というタイトルがつけられ、「輝く私のための女子力アップ計画」というコピーが入っていた。こちらも例年になく人がきてびっくりしましたという反応がありました。「検診を受けま・・・・しょう」という魔・・性の攻撃ではダメだと気づいたんですね。 行政ですらここまで変わり、ここまでやっているんです。一旦、食いついちゃったらこっちのもの。何を言っても受け止めてもらえる。でも、相手が食いつく前だと、どれだけ正しい事をいっても伝わらないんです。――『デンタリズム』をご覧の多くの歯科関係者の方々へ、メッセージをお願いします。北折 歯医者さんもそうですが、歯科衛生士さんにいつも言っているのは、例えば、心臓病手術の世界的権威の先生がいらっしゃいますが、あの人たちと比べてどっちが偉いんですか? と。 だってあちらは「壊れたものの修繕」じゃないですか。一応修繕しましたが、また壊れる可能性がありますから出来るだけ動かさないでくださいね、みたいな。一方で、歯科の場合は、全身の病気に関して、がん検診の受診者が2名から20名になったという愛知県の事例。北折さんの研修を受けた1人の保健師の呼びかけによって新しく作り変えられたという「子宮がん検診」のチラシ。じゃんけんで負けた保健師が自らの結婚式の写真を使用したという。裏面には、「5年後のあなた、恋していますか?」、「バリバリ働いていますか?」というメッセージが入っており、「がんで死ぬかもしれない」という言葉を使うことなく、大きな成果をあげている。21 Dentalism 25 WINTER 2016これから壊れるかもしれない人を大勢救ってあげられる仕事ですよね。その方が何万倍素晴らしいかわかんないくらいじゃないですか? とお話ししています。 ちょっと頑張れば自分でそれができる、そのやり方を教えてもらえる。どれだけ凄いことか。保健師も、歯科衛生士も、地域で健康づくり推進委員のようなボランディアに携わっている方々も同じです。どんな名医より凄い。壊れちゃってから向こうから来た人だけを修繕する仕事とは違い、壊れないようにすることが、どのぐらい立派な仕事か。 更にいいのは、苦労すればするほど、ではなくって、「楽しめば楽しむほど」人が幸せになる、滅多にない仕事じゃないですか。だって、ホントにそうなんですもん。 難しいテーマを誰にでもわかる内容に変換し、面白い番組として送り出し続けてきた北折さんにとって、まだまだ世の中は「下手」なことで溢れかえっているのだろう。ひるがえり、歯科が届けたい情報は、届けたい人々の元へ効果的に浸透しているのだろうか。彼の手にかかれば、もっとそのスピードは高まりそうである。

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