Dentalism 25号
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なります。 今日の子どもは明日の大人の患者さんです。現在の日本は、少子化時代であると同時に、小児齲蝕も激減しています。これからの小児歯科は「小児期のみを診る歯科」ではなく、「小児期から診る歯科」という発想法が必要だと思います。――なぜ、子どもを泣かさない治療にこだわるようになったのでしょうか。岡崎 岡山大学病院は、小児の先天性心疾患が有名で全国から患者さんが手術に来られます。しかし、むし歯があると病巣感染の問題で手術ができません。先に歯科治療を行うのですが、低年齢の子どもは泣きます。元来、心臓に予備能力がないので、泣くと負担がかかり心不全を起こしかねません。あまりの緊張に子どもが起こす前に私が起こしそうになります(笑)そこで、普段から健康な子どもを泣かさないために工夫をし、実践しておく必要がありました。その延長に先天性心疾患や障がい児などの歯科治療があるのです。――先生の話が面白いと評判なのは、その辺りに秘訣がありそうですね。岡崎 いやいや元々話ベタでした。かつて岡山大学小児歯科の医局では「一人一フィールド」といって、医局員全員が地域に出かけ、乳幼児歯科健診や学校で話をするという教育がなされていました。私も小・中学校へ行きましたが、大人と違って、子どもは話が面白くないとすぐにざわつきます。そこで気がついたのは興味を引く話の内容や展開方法です。それを30年以上、考え工夫してきました。 歯の話というと誰もが「歯を磨きましょう」、「甘い物を控えましょう」という話だと思っていますが、私は歯の話から入らないようにしています。例えば恐竜の好きな子がいれば、恐竜から歯の話に展開しますし、AKB48でも、ウンチでも、タバコでも、歯の話につなげることができます。歯は食べ物を噛むために生えてくるのですから、「食育の話」などは、そのまま噛む話だと思います。――現在はモンゴルの大学でも教えていらっしゃるようですね。岡崎 モンゴルには25年ぐらい前から行っていますが、ソ連の崩壊とともに食生活が変わり、子どもたちのむし歯が急増しました。そこでモンゴルの歯科医師を対象に講義をしていましたが、治療法が主体となりがちです。これでは子どものむし歯は減りません。そこで、モンゴル医学歯学大学で歯学生向けに講義を始めました。――どのような講義でしょうか。岡崎 歯学生は、子どもの口腔内がひどい状態であることを知りません。そこで、まずウランバートルの幼稚園で全員の口腔内写真を撮影しました。講義では20年前のモンゴル遊牧民の素晴らしい口腔内写真を見せ、このような口をしていたからチンギスハーンの時代には、ユーラシア大陸を横断し世界地図の半分を塗り替えることができたのだと教えます。その後、モンゴルの子どものひどい状態を見せ、この子たちが将来、先ほどのようなたくましい口になることができるだろうか? と問いかけます。全員、ノーと言います。そこで「今の子ども達をこのような口にするのが歯科医の仕事だ!」と伝えます。こうして講義を盛り上げます。また幼稚園・小学校での学外実習も始めました。私の話を子どもたちが楽しそうに聞いている様子を学生に見せます。このような教育をすると、小児歯科や学校歯科保健に興味を持つ学生が増えます。さらには、歯科医師は診療室で患者さんが来るのを待つ「待ちの医療」ではなく、積極的に地域に出かけて活動することも歯科医師の役割であることに気がつきます。――毎年一度回開催されている「公衆歯科衛生研究会(通称:ネコの会)」では、歯科に大きな影響を与えている様々な業界の方を、いち早く特別講師として紹介されていると評判です。岡崎 この会は年に一度、神戸で行っており今年で33年です。グループワークを中心とすることで参加者同士が知り合いになり、新たなネットワークが構築できます。演者は、「面白い!」と思う方や、これからの歯科界をリードしていただける方にお願いしています。『デンタリズム』でも紹介していただいた(糖尿病専門医の)西田 亙先生、(あいうべ体操の)今井一彰先生も素晴らしい先生なので、初めてお会いした時にお願いしました。演者の先生にもグループに入っていただきます。それがきっかけで全国から講演依頼が来るそうです。おかげで西田 亙先生・今井一彰先生の奥様は、きっとおかんむりだと Dentalism 25 WINTER 2016 8遊牧民の口腔内(60歳)1993年撮影ウランバートル幼稚園児の口腔内

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