Dentalism 24号
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21きりわかる。心臓などは、口や消化管とは違うため、術後の回復がわかりやすい。 信州大学には、口腔悪性腫瘍患者における病原細菌の検出率に対する効果を比較したデータもありますが、術後、放射線治療後どちらの場合でも、口腔機能管理により病原細菌の検出率が大幅に下がっていました。大きな要因は、口腔と咽頭の細菌叢を健全に保つことであると考えられています。 さらに、周術期口腔機能管理を実施して以降、口腔内細菌による菌血症の減少がみられ、口腔内細菌の検出細菌に占める割合は半減したというデータもあります。つまり、口腔ケアによる病原菌のコントロールにより粘膜免疫の負担が軽減され、その結果、創傷と治癒が促進され、合併症が少なくなっているのではないかというのが私の考察です。――口腔機能管理が、周術期にそれほどの影響をもたらしているとは思いもしませんでした。丹沢 医療行為の中でも手術は大きな侵襲を伴う治療の一つです。その侵襲によって身体が自分の防御力を越えた場合に、様々な問題が起きます。 海外の外科などでは、合併症の予知スコアなども、領域別にかなり確立しています。口腔機能管理においても同様なものを作り、スコアリングしたときに、自分で磨けばいい人と、口腔機能管理が必要な人に分かれてくる。そうした区分けも必要となるでしょうね。 本来は、異常に陥って合併症などを併発して脱落してしまうような人たちが、どのような条件で予測できるのかを見極め、そういう人に集中的に施していく道筋を立てなければなりません。そうすれば医療費も医療資源もさらに節約できますから。――今後は、医科歯科連携による周術期口腔機能管理が推進されていくのでしょうか。丹沢 本当に求められている医科と歯科の連携というのは、決して口の中を洗浄するというレベルの話だけではありませんし、何でもかんでも口腔機能管理を行えばいいという話でもありません。実は誤嚥性肺炎などは、術後にそんなに起きるわけではありません。その予防のための口腔ケアだけでは説明つかないことも多いのです。心臓――効果をもたらしている原理は何なのでしょうか。丹沢 大阪警察病院では、胃がん、食道がん、甲状腺がん、大腸がん(結腸・直腸)、心臓手術患者における口腔機能管理の実施群と未実施群でデータをとっていますが、口腔管理があった場合の方が医療費も安く、体温や白血球数、CRPなども早く戻ることがわかっています。汚くない場所における手術のほうが、その差がはっのように口と連続性のない臓器でも効果があるわけですから。 医学的に、どのような疾患の患者が対象となるのかを明らかにしていく必要があります。単に疾患や部位だけで決めるのではなく、治療侵襲の大きさや、患者の体力や予備能力の大きさ、原因や局所の要因などが重なっていろんなことが起きている人を術前に評価して見つける努力が必要となります。 でなければ医療経済に悪い影響が出て成り立たなくなりますからね。本当に必要な人に必要なケアやサポートをしていくことが患者さんのためにも大切です。――今、歯科医師に求められていることは何でしょうか。丹沢 一つは在宅や訪問を頑張るということでしょうね。拠点病院から地域に戻るときに、施設や自宅で療養上問題となるような口の状態や疾患を起こさないようにするための方法について歯科医師がアドバイスをしていくことで、存在感を発揮し、医療の中に歯科医療を確立することでしょうね。 削って詰めるという歯科医療は、もう既に全保健請求の45%ぐらいになってきています。厚労省も訪問や連携などに重点をおいてきています。今回の改定も、かかりつけ医だとか、24時間態勢で患者さんを診ようと努力している歯科医師にはいい改定でした。歯科にとっては医科よりも、前回の改定よりも良かったはずです。 国も将来のビジョンが欲しいんですよ。医科のこと、歯科のことだけではなく、患者さんのことを考え、国民的なコンセンサスが得られるような連携が求められているのだと思います。 医師も、歯科医師も、連帯感を持って、患者さんの医療に連携して参加するためは、互いに対するリスペクトが必要です。3割の人がそういう態度を表に出して動いていくようになると世の中は変わります。1割ではまだダメ。もっと表に出して行きたいものですね。「教授というのは人に教え、授けるのが仕事ですから」と語り、医科と歯科の大きな架け橋として奮闘する丹沢秀樹教授。42歳の若さで大学教授となり20年。その経験とバイタリティが、今後も、この国の医療のカタチを健全な方向へと導く力として活かされていくことを切に願いたい。■周術期口腔ケア分析 腹腔鏡下  胃切除・全摘 口腔ケア有無 比較症例数平均/術後日数標準偏差/術後日数死亡数入院後肺炎患者数平均/DPC(円)平均/出来高金額合計(円)平均/20収益因子@投薬平均/30収益因子@注射平均/40収益因子@処置平均/60収益因子@検査平均/70収益因子@画像789.99.803¥1,655,554¥1,628,577¥3,111¥38,562¥11,196¥51,240¥26,8785811.111.103¥1,700,905¥1,678,465¥3,508¥46,990¥13,278¥54,464¥31,906206.60.900¥1,524,039¥1,483,901¥1,958¥14,119¥5,158¥41,890¥12,2972012年4月~2013年9月退院データ口腔ケアあり口腔ケアなし全体

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