Dentalism 23号
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7障害児や高齢者、病気の方にはかかわっていませんでしたが、アドバイスして下さり、声援し続けて下さって、道は違っていても、勉強の仕方や、気持ちを共有できる仲間作りの大切さ、歯科医師として愚直に患者に寄り添うことを、丸森先生から学びました。 また、義歯の師匠でいらっしゃる加藤武彦先生からは、義歯を通じて在宅往診を教わり、在宅のご家族や多職種の方々に対するマナーなどをたくさん教えていただきました。私にとって丸森賢二先生、加藤武彦先生は、私をこれまでに育てて下さった大恩人です。――「口のプロ」として、あらゆる現場で「食べられる口」作りのために注力されていますが、その原点は、全国の在宅や施設・病院の現場にあるのでしょうか。黒岩 そうですね。育てていただいたと言っても過言ではありません。まだヘルパーや介護福祉士という名称もなく、誰も口腔ケアと言っていない時代でした。施設でお世話をされている方は寮母さんと呼ばれていました。 私は介護の仕方を一から教わりました。介護老人保健施設は、介護に携わる激務の現場ですので、最初から口腔は出来ません。介護現場に口腔ケアを根ざし、食べられる口を作っていけるようになるためには、まずは自分が寮母や看護師たちの立場を知り、学びを得ることが大切だと思いました。ですから月に一度、朝から晩までスタッフ皆さんと同じように、おしめかえをさせていただきながら介護の真髄を学びました。 そして、頭のてっぺんからつま先までお世話をしなければならない介護や看護の現場で、口腔のケアをするということがいかに大変なのかがわかりました。夜勤にしても50人ぐらいの入居者の方々に対して2人ぐらいの勤務体制ですので、それは想像を絶するほど大変な仕事です。頭が下がる思いでいっぱいでした。――そうした状況の中では、口腔までなかなか手が回らないのも無理はありませんね。黒岩 いよいよ口にかかわらせてもらえる雰囲気になるには数年かかりました。当時は歯が残っている人はほとんどいらっしゃいませんでした。歯ブラシにしても一般的なタイプしかありませんでしたが。口腔内は曲線ばかりなのに口腔内を磨くための道具が、普通の歯ブラシしかない時代でした。歯ブラシのヘッドの方向を回転させるだけでも時間がかかります。私はどうにかして、その時間を短縮したいと思い、開発した器具が「くるリーナブラシシリーズ」でした。 超高齢化社会となることがわかっていましたし、障害児も難病の方も遷延性意識障害の方々も増えていましたから、いずれもっと対応が困難になると予測していました。そのために激務な現場で勤務されている他職種の方々が、数分で簡単に口腔ケアができて、成果が上がる口腔ケア用品を作りたいと思ったのです。「くるリーナブラシシリーズ」第一号が出来たのは1999年7月のことでした。――口腔ケアのセミナーや実習では各地を訪れ、他職種に対しても実施されているそうですね。黒岩 講演には沖縄から北海道まで行っていますが、「座学」だけでは伝わらないと感じていました。ですから、私は2000年の冬からセミナーは実習付にしています。対象も他職種が多いです。セミナーではお互いに患者さんとケアする側をチェンジしながら相互実習を取り入れるようになりました。それでも口腔期の重要性が伝わりきらない、と思っていました。 そのような中、どのようなセミナーを企画すれば受講して下さる方達に伝わるか考え続け、セミナーの実習では、口腔機能の協調性を出す口腔ケア、口腔リハビリに加えて、食べられる口作りのために、食事の形態の調整まで行ってコースが終了するのですが、その後、施設や病院、在宅でお困りの方たちの評価をさせていただき、実際にアプローチをどう行ったらよいかを見ていただく機会を設けるようになりました。――一見は百聞にしかず、ですね。黒岩先生は、簡単に数分で行える成果の出る口腔ケアをどのように身につけられたのでしょうか。黒岩 とにもかくにも現場に出向き、困っている口腔内に対してどのように対応したらよいか、休診日の2日間は現場に出向いていました。解剖学や生理学も勉強しながら咽頭ケアも編み出しました。 休診日は知識を得るために、看護師や栄養士、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)など、他職種の勉強会にも出ました。当時は、そういう勉強会に歯科医師は私一人しかいないような状況でした(笑) セミナーを受講しては本を紐解き知識を学び、実際の現場では、訴えることができない患者さんが先生でした。ケアの仕方は患者の状態によっても変わってきます。例えば口腔乾燥の顕著な口腔内はどのような口腔ケアを行ったらよいか等々、試行錯誤の中から編み出しました。――そうして他職種の役割を学んだからこそ、ポイントを押さえた指導が出来るのでしょうね。黒岩 今日の夜は、ヘルパーステーションでの勉強会ですが、実はもの

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