Dentalism 23号
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19時、めちゃくちゃ反省しました。口の中ってこんなに大切なのかと。いくら最強のインスリン治療をやっていても、お口の中がぐちゃぐちゃだと、よくならんのだと。 しかも、その患者さんは数カ月後に「先生、近頃ご飯がおいしいんです。野菜もおいしいし、納豆なんて大嫌いだったのに、おいしく食べられるようになりました」とか言い出したんです。それまで僕が散々指導しても、高カロリーの味の濃いモノばかり食べていた人がですよ。でも実は、そこには重度の歯周病か切腹ものです(笑) 僕は元々、循環器出身なのですが、身体の不調を感じたある日、大学の検査室で心電図をとってもらったら、心室頻拍という非常に危険な、命にかかわるような不整脈が出ていたんです。その時はとりあえず薬を飲みましたが、僕は歯医者さんとの出会いがなかったら今頃死んでいたと思います。歯科に命を救われたんです。――先生の患者さんの中にも歯科との出会いで劇的に改善した方は多いようですね。西田 インスリン治療をしていた42歳の男性の話ですが、彼は糖尿病の悪化により血糖値300で入院し、病院のご飯を食べながら1日4回注射を打っていました。ところが、その患者さんは、毎朝、枕が血で濡れるというので急いで歯科治療を受けてもらったところ血糖値が一気に下がった。注射も必要なくなり飲み薬ひとつだけになったんです。 普通は入院しても1ポイントぐらいしか下がらないHbA1cの値が、1カ月後には2・6ポイントも下がりました。月に1万5千円ほど負担していた治療費も数千円で済むようになりました。僕はそのらくる「味覚障害」により、旨味や繊細な味がわからなくなっていたという事実が隠れていた。それを僕は見逃していたんです。――歯周病による「味覚障害」が原因で糖尿病が悪化?西田 僕もそうでしたけど、歯周病からくる「味覚障害」の患者には自覚がありません。歯医者さんも味覚検査なんてしないし、気にしていない。糖尿病内科でも口を診ない。毎日、日本全国の糖尿病専門医や管理栄養士が、栄養指の先生から聞いた話によると、幼少期に親から柔らかい食事ばかり与えられ、十分な咀嚼トレーニングが行われないことにより、口輪筋や表情筋が発達しない子供が爆発的に増えているというのです。また、2年前の調査で小学生の2割に味覚障害を認める報告がありました。恐らく顔面の筋肉の発育不全により咀嚼機能が低下し、唾液分泌量も減少していることが、味覚障害につながっているのではないかと僕は考えています。味覚障害は先ほど紹介した症例のように偏食に直結しますから、そのまま大きくなれば糖尿病へまっしぐらです。 そういう子どもたちを誰が助導をしていると思いますが、偏食の影に「味覚障害」が潜んでいれば、患者さんにどれだけ言っても野菜を食べてくれるわけがない。こんな当たり前のことを、医師も栄養士も教育を受けていないから知らないんですよ。 僕は今までの歯科の先人たちにも問題があると思う。口腔がきちんとしていないと「味覚障害」をきたして偏食に至るという、歯科にとってごく当たり前のことを、なぜ医科に伝えてこなかったのか。医科がそういう事実を知れば、やはり口は大事なのだと、もっと歯科に対する敬意が生まれるはずです。そうなれば糖尿病患者には栄養指導する前に歯科を紹介する必要があるという話になるでしょう。味覚外来をしているごく一部の先生以外は、まだ誰も注目していませんが、国も本気で糖尿病人口を減らそうと考えているのなら、この問題に切り込まないといけないですよ。――子どもの糖尿病も増えているそうですね。西田 香川県が小学生の成人病調査をしたところ、4年生の1割が、糖尿病予備軍に近い状態であることがわかりました。小児歯科「僕自身、歯医者さんとの出会いがなければ今頃、とっくに死んでいたと思います」

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