Dentalism 23号
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14Del-1分子が歯周の炎症反応を抑制。慢性炎症性疾患の治療に有効か。 歯周病は歯を失う最大の要因で、全身疾患へ波及する炎症疾患だが、未だに有効な治療法は確立されていない。そんな中、新潟大学大学院 医歯学総合研究科 高度口腔機能教育研究センターの前川知樹助教が、アメリカ・ペンシルバニア大学、ドイツ・ドレスデン工科大学との共同研究を行い、体内で分泌されるDel-1という分子が歯周病の治療に有効であることを発表した。 Del-1は主に血管内皮細胞から産生される抗炎症作用をもつタンパク質であり、インテグリン受容体を介して好中球の過度な遊走を阻止している。血中や脳内などに存在し、乳幼児までは多くあるが、年齢が高くなるにつれ減少していく。 今回の研究では、Del-1が炎症反応を抑制することに加え、骨を溶かす破骨細胞の活性化と分化も制御することが明らかになった。さらに、Del-1を歯周炎のサルに投与したところ、幹部組織の炎症を抑え、破骨細胞の数を減らすことにも成功した。 また、老化予防などに有効とされるオメガ3脂肪酸などからできるレゾルビンを投与すると、体内でDel-1が多く産生されることも判明。このレゾルビン投与によるDel-1誘導法は、歯周病だけでなく多発性硬化症や強直性脊椎炎などの慢性炎症性疾患の治療基盤となる可能性も示唆された。 副作用のことを考えると、体内で作られるDel-1によって炎症や骨破壊を抑えられるのは安全性の面で意義が大きい。全身の様々な疾患とも関連が大きい歯周病を抑制する分子が発見されたことは、健康寿命の延伸に繋がることが期待される。新潟大学大学院医歯学総合研究科高度口腔機能教育研究センター前川知樹 助教■Del-1による破骨細胞への分化抑制世帯所得が低いほど残存歯数が少ない。穀物偏重の食生活も悪影響の可能性あり。 厚生労働省が発表した平成26年国民健康・栄養調査で、世帯所得が低いほど残存歯数が少ないことが明らかになった。調査によると、残存歯数が20未満の割合は、男性の場合、600万円以上の人が20・3%、200万円以上600万円未満の人が27・5%、200万円未満の人が31・2%。女性の場合、600万円以上の人が25・8%、200万円以上600万円未満の人が26・5%、200万円未満の人が31・2%だった。 その理由は何なのか。同調査の中に気になる項目を見つけた。まずは、世帯所得別の食生活。所得の低い世帯ほど米やパンなどの穀類の摂取量が多く、野菜や肉の摂取量が少ないという結果が出ている。1日の穀類の摂取量では、世帯所得が600万円以上の男性が494・1gに比べ、200万円以上600万円未満の人が520・9g、200万円未満の人が535・1g。女性の場合も、それぞれ352・8g、359・4g、372・5gと所得が低いほど摂取量が多い。一方、野菜の摂取量になると、男性の場合、所得が600万円以上の人が322・3g、200万円以上600万円未満の人が288・5g、200万円未満の人が253・6g。女性の場合、それぞれ313・6g、282・8g、271・8gと所得が高いほど摂取量が多くなる。肉類も同様に、所得が高いほど摂取量が多くなるという結果だった。 低所得世帯の食生活はどうしても価格が安い米やパンに偏ってしまいがち。そうなると、糖質の過剰摂取、栄養摂取状態が悪化するという悪循環に陥ってしまう。お金の問題があるという前提の上で、歯科としては、むし歯、歯周病予防という観点でこれまで以上に食生活の改善を促していく必要があるだろう。■所得と生活習慣関等にする状況(20歳以上)歯の本数20歯未満の者の割合世帯所得200万円未満世帯所得200万円以上600万円未満世帯所得600万円以上摂取量男性女性(%)40.030.020.010.00.0(g)600500400300200100033.9%31.2%27.5%26.5%20.3%25.8%535.1g520.9g494.1g352.8g322.3g313.6g122.0g83.9g359.4g288.5g284.8g111.0g78.0g372.5g253.6g271.8g101.7g74.1g穀類野菜肉類穀類野菜肉類穀類野菜肉類TRAP染色破骨細胞が赤く染まる刺激なしマウスの骨髄細胞ヒトの細胞刺激なしDel-1Del-1Pit assay黒く抜けているところが骨が吸収された箇所

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