Dentalism 23号
14/36

12むし歯菌と脳出血の発症に関連あり。口腔ケアが脳血管疾患の予防に繋がる。歯胚を分割して歯を増やす技術を開発。新たな歯科再生医療に期待が集まる。 全脳卒中の約20%を占め、症状が重篤となりやすい脳出血。その主要な原因は、過度な塩分摂取、及び高血圧や糖尿病などの生活習慣病と言われている。その一方で、近年の研究では、口腔内の細菌が血管の中に侵入し、脳や心臓など全身の血管の病気を引き起こすリスクが高くなるという報告も多数出てきている。 そんな中、国立循環器病研究センターの猪原匡史医長らの研究チームは、大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子感染制御講座や京都府立医科大学院医学研究科 地域保健医療疫学の研究チームらと共同で、むし歯の原因菌として知られるミュータンス菌が、脳出血の発症にも関与していることを突き止めた。 猪原医長らの研究グループは、脳卒中で同センターに入院した患者の唾液を採取し、その中に含まれているミュータンス菌を 現在の歯科医療では、歯を喪失した場合、入れ歯やブリッジ、インプラントといった人工物で代替し、咀嚼機能を回復する治療法が一般的だ。しかし、これらの治療法だけでは歯の生理的機能を完全に回復することは難しい。より生物学的な機能を付加し、周囲の組織と連携して機能する歯科再生治療に注目が集まっている。 現在行われている歯科再生治療には、自身の歯を欠損部に移植する歯牙移植治療や、幼弱な発生段階の自家歯胚を利用する歯胚移植治療がある。しかし、一人が持つ歯胚の数や、歯胚の発生時期は限られているため、移植可能な歯胚の数自体を増やす技術が望まれていた。 そんな中、理化学研究所多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームの辻孝チームリーダーと東京医科歯科大学医歯学総合研究科顎顔面矯正学分野の森山啓司教授らの研究チームが、マウスをモデルにした研究で、一つの歯胚を分割し複数の培養。cnm遺伝子保有株の有無や働きと、脳出血や脳MRI画像で見られる脳の変化との関係性を調査した。その結果、cnm遺伝子保有株が唾液中から検出された患者では、そうでない患者と比較して、脳出血を発症している割合が高く、さらに脳のMRI画像で観察できる微小脳出血の跡も多いことが明らかとなった。生活習慣や年齢の影響により硬くなった脳血管に対してミュータンス菌が障害を起こすことで脆弱になった血管が裂け、脳出血の発症に至るのではないかとのことだ。 ミュータンス菌と脳出血との関係が明らかになったことで、日頃の歯磨きや歯科治療が脳出血の予防になることはもちろん、脳卒中の新たな予防、治療法の開発に繋がる可能性が出てきたということ。脳血管、脳神経内科と歯科、ますます医科歯科連携の重要性が高まっている。歯胚を発生させる歯胚分割技術を開発した。 実験では、胎齢14・5日のマウスの臼歯歯胚をナイロン糸で結紮し、1つの歯胚を2つに分割。分割した歯胚が口腔内で正常な歯に発生するかどうか、再生した歯が天然の歯と同等の生理的機能を持つかどうかを検証した。その結果、複数の歯胚が正常に発生し、天然の歯と同等の構造を持った歯が再生されたという。 この技術を発展させ人間へ応用することができれば、免疫学的拒否反応を受けることなく、歯の数を増やすことが可能になる。先天性歯胚欠損や何らかの理由で歯を失った人など、多くの人の助けになるだろう。近い将来、歯を失っても困らない時代が訪れるかもしれない。高血圧性脳出血の患者のうち、26%でcnm遺伝子保有株が検出され、ラクナ梗塞(12%)、心原性脳塞栓症(6%)、アテローム血栓性脳梗塞(0%)など他の脳卒中病型と比較して高い割合だった。東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 顎顔面矯正学分野森山啓司 教授理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 器官誘導研究チーム辻孝チームリーダー■脳卒中で入院した 患者のミュータンス 菌にcnm遺伝子株 が検出された割合高血圧性脳出血(脳内の微細な血管が出血する疾患)ラクナ梗塞(脳内の微細な血管が詰まる病気)心原性脳塞栓症(心臓でできた血栓が不整脈により脳に流れ込み、脳血管を詰まらせる疾患)アテローム血栓性脳梗塞(脳内から頚部にかけての血管に脂肪がたまり血流が悪くなる疾患)n=15n=16n=25n=2326%74%88%94%100%12%6%cnm遺伝子陽性ミュータンス菌ありcnm遺伝子陽性ミュータンス菌なし■分割歯胚の口腔内移植後の経過像分割歯胚をマウスの口腔内に移植し、マイクロCTにて萌出過程を観察。移植から約2か月後には反対側の歯と咬合していることが認められた。移植10日目移植20日目移植50日目

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 14

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です