Dentalism 22号
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9るうちにケースも写真も揃ってくるし、ケースプレやると面白いからって、いろいろとお声がかかるようになって。――かつては高齢者が総義歯となるのは自然なことだったように思いますが、人口減や意識の高まりとともに、総義歯になる人は減っていくのではないかというイメージもあります。実際のところ総義歯をとりまく環境はどうなのでしょうか。村岡 確かにそういう側面もあるかもしれない。以前は高齢者施設にいくと、ほぼ総義歯だったのが、最近はパーシャルデンチャーも多い。でもね毎年9月15日に100歳以上の高齢者の数が発表されているけど、今年は6万人を突破したんだよ。調査が開始された1963年は全国で153人だったのに、この50年ほどで400倍だよ。99歳や98歳も増えていると考えるのが自然だし、どんな人でも老化するし歯も抜ける。総義歯は否定できないよね。 僕はね、中途半端に「8020」って言うぐらいなら、ある時期まできたら総義歯になってもいいんじゃないかと思っている。1本とか2本とか中途半端に残すぐらいなら、「6000」から「6028」にすればいい。外した瞬間に無菌状態になるしね。自宅で介護なんかしている人は生活の世話だけで精一杯だよ。食事や薬の管理なんかはできても、歯を磨いてあげるところまで、なかなかできないという人もいる。 元気なときは唾液の循環があるからいいの。でも寝たきりになって唾液の循環も無くなってくると、歯はどんどんむし歯になっていく。でも総義歯なら、食べるときに入れて、その後、簡単に洗ってあげられる。名前も入れられるし、高齢者施設でもケアしやすいと思うんだよね。――風の噂で、村岡先生自らが入れ歯にするために歯を抜いた、という話を耳にしたのですが、本当ですか?村岡 俺は今まで人前で、散々入れ歯の話をしてきたけれど、自分自身が入れ歯を体験していないじゃないか、と思ってね(笑)  去年の2月2日、67歳になった時、その直前に奥歯が1本折れたのをきっかけに入れ歯になろうと思ってさ。歯科技工士が半分以上を占める「デンチャーライフ勉強会」で、入れ歯を作りたいという話があったもんだから、モデルを引き受けたわけ。別に1本欠けていたのもあったから、あわせて奥の2本を抜いてさ。 それで入れ歯をいろいろ試して何個も作ってみたわけ。入れ歯が違うだけで、しゃべれなくなるし、食べられなくもなる。チタン床、チタン合金床もあれば、ジルコニア床のものもある。デザインが苦しくないかとか、バネが邪魔じゃないかとか、自分でいろいろ試してみないとわかんないこともあるかと思ってね。歯の並べ方を狭くするとどうなるか、とかさ。(ここで実際に入れ歯を交換し、入れ歯が変わると滑舌が悪くなり話が聞き取りにくくなる状態を披露して下さる) 今年のむし歯予防デーには下の歯も抜いたんだよ。上下両方の入れ歯がどれほど鬱陶しいものなのか、入れ歯と入れ歯より、入れ歯と歯という組み合わせの方がいいかなとか、いろいろ考えてね。次の2月2日で69歳になるけど、実は70歳までに総義歯にしたいと思ってるんだよねぇ。 患者の身になる、気持ちになるということを正に身を持って示し、義歯をしていない相手に対しても、とことん解りやすく説く。村岡秀明先生の笑顔には、病気や加齢により看護や介護を受けるようになった先の歯科医療まで見据えた力強さが秘められていました。Prole 村岡秀明(むらおか・ひであき)1947年千葉県出身。1972年神奈川歯科大学卒業。村岡歯科医院(東京都中央区)勤務。1976年北海道の町立診療所赴任。1980年千葉県市川市にて開業、現在に至る。■むらおか歯科・矯正歯科クリニック千葉県市川市宮久保1-23-23047-372-6645http://muraoka-dentalclinic.com/下の歯の義歯を手掛けてくれたという、埼玉県川越市の歯科技工士、川島哲氏とのツーショット。村岡先生曰く「俺の入れ歯の師匠で優秀なテクニシャンでもあるんだよ」と。知識や技術を少しでもわかりやすく継承するため、作っては試し、入れ歯の研究を重ね続けている。日本の100歳以上の人口はものすごい急カーブを描きながら増加している。注目の歯科医師インタビュー

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