Dentalism No.19
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10病だと思うんだけど、こんなこと言ってるのは僕だけかなぁ(笑)――口腔外科と一般歯科との間にそんな落とし穴があったとは。谷口 近頃では抜歯というと何でも口腔外科に送っちゃう先生もいるようだけど、これも専門性を高めた弊害ですかね。麻酔注射で神経を刺激したり、抜歯の衝撃によって麻痺が残ったりして訴訟が起こるケースが増えているので、「麻酔=トラブル」と考える先生も多くなってきているんでしょう。――シュガーコントロールの徹底ぶりにも驚かされます。院内では甘いお菓子はいただかないとか?谷口 むし歯も歯周病も生活習慣病としてとらえています。プラークを取り除くことも大切ですがプラークをつけないことの方が本当の予防だと思うんです。むし歯、歯周病共通のプラークの原料は砂糖ですので、当院ではどの患者さんにもシュガーコントロールのお話をしています。かといって、止められないからといって診ないわけではないけれど、真実を曲げるわけにはいかない。患者さんにお話ししている以上、僕はもちろんスタッフも甘いものは食べませんので、いただきものには困ってしまいます。できるだけ気持ちを害さないようにしてお返ししています。シュガーコントロールは流行らないし、これからも流行ることはないでしょうけど(笑)、たと待合室のモニターでは「院長はまるで回遊魚。止まったら死んじゃうんじゃないかと思うほど」というスタッフによるウィットに富んだコメント付で紹介されている。谷口 どんな時代でも、目の前の患者さんのことを思ってやっていれば、世の中は絶対に見捨てないし、焦る必要もないんだけどね。でも、それが皆はできないということなんでしょうね。借金があって、今月いくら稼がなきゃなんないとか、目先の要求に負けちゃうのかね。そういう意味では、実践することが難しいのかもしれない。ホントは難しいわけはないんだけどね。だから僕は、若い歯科医師たちには開業するなら最低限の資金で始めるよう言っています。最初は居ぬきだっていい、3年間は辛抱だって。患者さんのために頑張っていれば必ず結果はついてくる。うちを出た歯科医師は皆、今では患者さんが多くなって困っているぐらいですよ。――谷口先生というと2007年に「日本歯科医学会会長賞」(日本歯周病学会推薦)を、2012年には川崎賞(日本臨床歯周病学会より)を受賞されていますし、「歯周病」のイメージがありますね。谷口 僕はすべてに最善を尽くしてやってるつもりなんだけど、講演会やセミナーのテーマとなると「歯周病」が多いかもしれないね。本当は何でも屋だし、どちらかというと総義歯と抜歯が一番得意だと自分では思っているんだけどさ(笑)――歯を残すことに定評のある先生が「抜歯が得意」とは?谷口 骨に水平に埋伏している親知らずなんかでも、自分で抜きますよ。厚労省の歯科疾患実態調査では第二大臼歯の寿命が一番短いというデータがあるけれど、その原因の一つには親知らずの存在があると思っているんです。特に水平埋伏智歯は口腔外科でも抜歯できますが、ほとんどの場合、抜いたら抜きっぱなし。痛みがとれればいいというものではない。大事なことは手前の歯を守ることですからね。だけど、実は、親知らずを抜いた手前の第二大臼歯は、重度な歯周病と同じ状態になっていることが多く、親知らず側の面は骨がなく、歯石がべっとりついていることもある。だから、第二大臼歯の裏側の歯石をしっかりとって、きれいにしてあげるためにも、僕は自分でやっちゃうわけ。抜きっぱなしにしている歯医者の不注意や見逃しによって本来守られるべき歯が失われている可能性があるんです。ある意味、医原歯科医院を訪れるわけでしょう?患者にとっての問題を解決することなく、話が他へそれちゃったりするのは、患者の立場ではなく、ドクターの立場で考えているからですよ。初診で一番大事なのは「主訴の解決」。私は患者を診て一番困っていることは何だろうと考えることが習慣になっちゃっている。でも「歯はできるだけ抜かないで残す。1本でも多く、1日でも長く」をモットーにしているから、歯を抜いて痛みを止めるなんてことはしないよ。――患者の立場で行われる医療に対する求めは大きいのに、業界全体的にはなかなか実現されていないように感じます。経営という問題が先に立つからなのでしょうか。

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