Dentalism No.18
21/36

DentalismNews &Topics19一刻も早く遺体を家族のもとに帰したい。歯科医師の信念が被災地を元気づける。2011年3月、東北・関東地方に未曾有の被害をもたらした東日本大震災。岩手県釜石市鵜住居地区でも600人の犠牲者を出した。この地で歯科医院を営む佐々木夫妻の取り組みが人々を復興へと立ち上がらせたドキュメンタリーが書籍となり、話題となっている。震災直後、壊滅状態となった釜石市。佐々木夫妻はこの地にとどまり、半壊した医院を再建しながら被災者の治療を行っていた。夫妻がこの地にとどまった理由は被災者の治療ともう一つ。遺体の歯とカルテを照合し、家族のもとに帰したいという強い想いがあったからだ。歯科所見の照合による身元確認は、遺体の損傷が激しい場合でも有効で、1985年の日航が津波から逃げる際に、カルテが入った棚の扉にガムテープを張ったことで、中身の流出が防げたのだ。残された約4700枚のカルテを洗い、身元がわからない遺体の歯科所見と照合。これまでに患者だけでも、50人以上を遺族のもとに帰してきた。「3年も経って家族がまだ見つかっていない人たちはどれだけ辛いだろう」。そんな想いを胸に、辛い作業を続ける佐々木さん。一人の歯科医師の信念と行動が鵜住居地区に与えた影響は大きい。この書籍は児童書として発売されており、親子で読むにも最適だ。待合室に一冊置いてみてはいかがだろうか。機墜落事故をきっかけに重視されてきた。東日本大震災後にも多くの歯科医師が身元確認作業に当たったが、津波によるカルテの流出でなかなか身元判明に繋げられなかった。しかし『ささき医院』では、妻の孝子さん『泥だらけのカルテ』 著者/柳原三佳出版社/講談社 定価/1,200円(税別)今も身元のわからない遺骨に手を合わせる『ささき歯科医院』の佐々木憲一郎歯科医師。津波直後の『ささき歯科医院』の様子。壊滅的な被害を被った。失った歯の数が多いと消化器系がんで死亡する確率が高まる!?九州歯科大学の調査によると、失った歯の数が多いほど、胃がんや大腸がんなど消化器系のがんで死亡する確率が高まる可能性があるという。同大は、福岡県北部に在住、大正6年生まれの男女約824人を10年以上にわたって追跡調査。追跡できた697人のうち414人が亡くなっており、そのうち71人の死因ががんだったという。がんの内訳は、肺がんが16人、肝臓がんが13人、胃がんが12人、大腸がんが6人、膵臓がんが4人などだった。亡くなった方が永久歯28本のうち、何本歯を失っていたかを照合。飲酒や喫煙の有無などの交絡因子で調整した結果、むし歯や歯周病で歯を1本失った人は、歯が全て揃っている人に比べ、胃がんや大腸がんなどの消化器系のがんで死亡する確率が6%も高いと判明した。さらに、失った歯が5〜9本の人は、0〜4本の人に比べ2.2倍、同じく10本以上の人は3.2倍と、残っている歯の数が少なくなるほど、リスクが高い傾向にあった。こうした歯の喪失との因果関係は、がんで亡くなった人だけで、脳卒中や心臓疾患で亡くなった人には見られなかったという。この結果について、調査を行った同大の安細教授は、「歯を失ってしまうと、入れ歯やインプラントなどの補綴治療をしても咬合力が落ち、消化器系の臓器に負担がかかることが一因では」と分析。歯を失うことは、健康を失うことにつながる。それだけ、口腔内の健康が大切だということだろう。九州歯科大学安あん細さい敏とし弘ひろ 教授

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です