Dentalism No.18
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8プラークコントロールはもちろん、唾液のpHや細菌についても調べていました。――高齢者に対する歯科医療の在り方についても、得るものは大きかったようですね。米山 どんなに治療をしても、根本的な原因を取り除く治療をしていかないと、口腔内は一向に改善していきません。日本では、そんな当たり前のことができていない時代でした。むし歯があればむし歯の治療をしますが、むし歯にならないようにしようという風にはならない。歯周病患者の歯石をとっても、なぜ歯石をとらなきゃいけないのかわかってやるのと、場当たり的にやるのでは結果が違う。 そこで、根本的な原因を除去するため、歯科衛生士と一緒になって高齢者施設の口腔ケアを始めたわけです。そうすると、治らないと思われていた歯肉炎や歯周病に変化が表れてきた。 いくら年をとっていても、抵抗力が落ちていても、介護を受ける身であっても、基礎疾患を持っていても、ちゃんとした戦略を立てて方針をもって原因を取り除いていけば、治っていくということがわかってきたのです。 そういう中で、常勤の職員たちの意識も変わってきた。自分たちも食後の口のケア、口に関わっていった方がいいのではないか、という意識革命です。――具体的には、何が職員の気持ちを動かしたのでしょうか。米山 月に2回のボランティアですから、全員を診るわけではなく、治療が必要な人を中心にケアしていたのですが、まず彼らの口から口臭が消えて、顔の表情が良くなり、それまで介護を拒否傾向だった高齢者の受容が増えていった。不思議なことでしょう? 口はガードが堅く、見せたくない場所の一つです。そこに触れさせてもらい、口を開けてもらっているうちに、心もオープンになっていったんです。施設内では、話をしなければ、食べること以外に口を使うことはない。でも口腔ケアで口を触っているうちに、表情まで変わってきた。 さらに施設内で熱を出す人が激減したのです。それまでは定期的に熱を出す人がいたのですが「何が起きているんだろう?」と考えたときに、看護婦長がピンときて私に、介護内容に変更はないので、口のケアをしていることが要因ではないかと言ってくださった。 あの時は、口と全身が結びついた瞬間でした。――今では、口腔と全身の関係については幅広く研究が進んでいますが、それはまさに最初の一歩だていたんですね。口が原因で人間関係が阻害され、介護の質を落としていると感じました。――その後、スウェーデン政府奨学金給費生として、名門イエテボリ大学に留学され、錚々たる方々の傍で学ばれていますね。米山 大学6年生の時、はじめて岡本浩先生にお会いした際、握手されて「医局で待ってるよ」と言われ、その気になってしまって。先生は何十人という学生に声をかけていたかもしれないんですけどね(笑)タンパク分解型除菌水(POICウォーター)を用いることによって、医療機器内(チューブなど)を流れる水の除菌はもちろん、治療前や治療中の患者の口腔内の除菌も徹底して行われている。置き去りにされた高齢者の口腔内。プラークや歯石は沈着という次元を通り越して堆積している。ひどい口臭が独特の施設臭にも繋がっていたという。 1981年からの2年間は、リンデ教授、ニーマン教授、アクセルソン教授といった一流の先生方の下で学ばせていただきました。とにかく日本人として恥をかかない、先生方にご迷惑をおかけしない、先輩の顔に泥をぬらない、の一心でした。 スウェーデンは福祉や医療の分野でも先進性があり、とても国威がある。アメリカの医師とディスカッションしても負けないですし、論文の数も多く質も高いです。世界の10年から15年先を走っている感じです。高齢者歯科についても

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