Dentalism No.16
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5ちっちゃくなったよねぇ……気のせい? いや、有名チェーンのドーナツもハンバーガーも絶対に小さくなった!『俺たちに明日はない』(‘67米)でボニー(フェイ・ダナウェイ)が食べていたハンバーガーの大きさに目を見張り、大人になったら絶対に食べてやる! と憧れたビッグマ○クも、ひと回り小さくなった気がして、憧れも縮むよねぇ~「あれから四十年!」きみまろさんではないけれど、今では日本人の体格も大きくなり、俳優だって、ルックスも演技力もハリウッドスターに引けを取らなくなった。今秋公開された『許されざる者』は、クリント・イーストウッド監督&主演でアカデミー賞作品賞など四部門を受賞した同名映画を、時代背景から台詞まで、ほぼ忠実にリメイクした映画だ。ハリウッドの名作を日本でリメイクなんて無謀でしょう! と言う人もいるが、今の日本映画界はスゴインデス! イーストウッドにびびってたまるか、こっちは天下の渡辺謙だ! と、謙さんが言ったかどうかは知らないが、日本版の『許されざる者』は原作を超えて、全く新しい映画に蘇ったと思う。明治十三年の蝦夷地(北海道)。かつて人斬り十兵衛と恐れられた男は、亡き妻との約束を守って刀を封印し酒も断って、幼い子ども二人とひっそりと暮らしていた。しかし、凍える原野に作物は育たず、暗澹たる思いの十兵衛のもとにかつての仲間・金吾(柄本明)が現れ、女郎の顔を切り刻んで賞金を懸けられた兄弟を殺して、もう一度人生をやり直そうと誘う。アイヌ民族の若者・五郎(柳楽優弥)も加わり、十兵衛は再び刀を手に賞金首を追う……というもの。まず、舞台を北海道の原野にしたことが良かった。私もパーソナリティをつとめている北陸放送に出演された渡辺謙さんが、「命の危険を感じるほど辛く過酷な撮影でした」と語っておられたが、それが観客にもひしひしと伝わってくる。見渡す限りの原野に、ぽつんと建つあばら家。他には何も、なんにも無い。雨と雪の原野は圧倒的な存在感で作品に重厚感を与えた。次に俳優陣の熱演。渡辺謙さんには風格と華があり、出演者全員が「喰われてたまるか」とばかりに入魂の演技をみせて、作品の骨格を太くしている。「許されざる者」とは誰か?仲間をなぶりものにした兄弟を殺してくれと小銭を出し合う女郎たちは、馬よりも安く売られてきたという。賞金をかけられた兄弟も普段は開拓に汗を流す若者で、賞金を手に入れて新しい人生をと願った金吾は拷問で殺されても十兵衛をかばい、ついに十兵衛は町を牛耳る大石(佐藤浩市)一味を斬るが、その大石でさえ、この地に規律と秩序で守られた町を築こうと夢みていたのだ。全員が許されざる罪を背負った人間であり、一方で善人でもあるというジレンマ。李相日監督は出世作『フラガール』のようなカタルシスを用意してはくれない。それにしても北海道を開拓した先人たちは凄い! 心からの敬意を捧げたいと思う。酒場で大石が「ここはいいぞ。堂々と肉が食える」と言いながら、七輪で焼いた肉にかぶりついていたが、あの赤黒い肉は何の肉だろう。鹿か、もしや熊の肉? 原野の開拓には先ず体力。その体力を養うために、硬い肉を噛み砕く立派な歯と丈夫な顎が、最も必要なものだったのかもしれませんね。「デッカイドォ~ 北海道!」ハンバーガーの大きさを云々なんて、私ってちっちゃ~い!文/桂木良子歯科医は映画がお好き?イラスト=サダ桂木良子/東京都出身。著書には、読んで美味しい映画のお話『シネマレストラン』がある。趣味は旅行とスペイン語。コーヒーと犬が好き。人はみな許されざる者…=

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