Dentalism No15
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5ベッドシーツを取り替えていてダンナのへそくりを発見。「み~つけた」とほくそ笑んで、ふと考えた。私ならどこに隠す? 手の込んだ場所に隠すと忘れそうだし、身につけているのが一番かも。でも大金だと嵩張りそう。まぁ私には関係ないか……なんて妄想していたら、2007年公開の『ブラッド・ダイヤモンド』を思い出した。内戦の続くシエラレオネを舞台に、不法取引されるダイヤモンドを巡るサスペンス映画で、ゲリラに武器を売る組織の手先であるアーチャーは、自らの口の中にへそくりを隠し持っていた。取引の失敗で追われる身となったアーチャーが、強い酒を一口含んでナイフで自らの差し歯を外すと、白い歯の空洞から上質のダイヤモンドがぽろり。悲しい生い立ちを抱えて闇社会で生き抜いてきた彼は、いざという時の逃走資金を、小さくて高価なダイヤに変えて、しっかりと身につけていたわけだ。う~ん、その手があったか!と唸ったものだが、あまりに悲惨なアフリカを描いたこの映画でも、アーチャー役のレオナルド・ディカプリオは素晴らしかった。アフリカを去る日を夢見ながら、ゲリラに誘拐された少年とその父親をかばって撃たれ、滴る血が染みてゆく赤い大地に手を伸ばす最期に涙を誘われた。渇望するものに手の届かぬ悲運の男を、彼ほど甘くせつなく演じられる俳優はいない。最新作『華麗なるギャツビー』の彼も実に魅力的だ。美しい容姿を持ち、宮殿のような大邸宅に住み、毎晩のように盛大なパーティーを開く若き大富豪ギャツビー。彼はどこから来て、何のためにパーティーを開き続けるのか。莫大な財産はどうやって作られたのか…… 物語は、ギャツビーのただ一人の友となるニックの回想形式で綴られる。フィッツジェラルド原作の同名映画は1974年のロバート・レッドフォード版が有名だが、比較されることを恐れずにギャツビーを演じたレオナルド・ディカプリオ。『タイタニック』の美少年も今や38歳。すっかり大人の貫禄を身につけて、美しい大富豪という表の顔と、黒い稼業の裏の顔、そして一人の女性を一途に求める純情を併せ持つ男を見事に演じきった。煌びやかな明かりと音楽、豪華な衣装とシャンパン、舞い散る紙吹雪と打ち上げ花火。少々品の悪さを感じるほどの贅をふりまく、ギャツビーの目的はただひとつ。かつて貧乏な自分を捨て、名門の富豪と結婚した恋人デイジーを取り戻すこと。馬鹿騒ぎの宴が終わり、邸宅が静かな闇に包まれる頃、河の対岸に建つデイジーの屋敷に燈る緑の灯りに手を伸ばすギャツビーの姿は哀しい。同性からみれば、デイジーは二人の男を天秤にかけて、より条件の良い方を選んだ、可愛くて狡い、普通の女なのに……突然、悲劇的に幕を閉じるギャツビーの人生。彼が求めたものは、はたして本当にデイジーの愛だったのだろうか。高級スーツに身を包み、「英国の名門で、オックスフォード大学卒……」と、悲しい嘘を語っても、貧農の息子という素性が消せるわけではない。巨万の財を築いても手に入らぬ上流階級という出自。良家の子女であるデイジーは彼の「憧れ」であり、夜毎に見つめる緑の灯は、望んでも叶わぬ夢の象徴だったに違いない。そして私は、俳優ディカプリオが焦がれてやまぬものを思う。抜群の演技力で何度もノミネートされながら、未だ与えられないアカデミー賞主演男優賞。ディカプリオが渇望して伸ばすその手に、どうかオスカーを!と。 ところで、ダンナのへそくりはどうしたかって? もちろん、そっと元に戻しておきました。我ながら、良い奥さんでしょう?文/桂木良子歯科医は映画がお好き?イラスト=サダ桂木良子/東京都出身。著書には、読んで美味しい映画のお話『シネマレストラン』がある。趣味は旅行とスペイン語。コーヒーと犬が好き。愛のディカプリオ=

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