Dentalism No15
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14歯根膜の成熟と機能を特徴づける分子を発見。再生療法開発への一歩、踏み出す。歯周靭帯(歯根膜)は、歯を顎骨内に固定する組織であり、咬合力への抵抗性、接触感覚などの重要な機能を担っている。一方で、歯周炎によって破壊されてしまう歯周靭帯は、一度失われると再生させることは非常に難しい。東京大学医学部附属病院集中治療部の小宮山雄介(こみやま・ゆうすけ)博士、東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の大庭伸介(おおば・しんすけ)特任准教授・鄭雄一(てい・ゆういち)教授らのグループは、京都大学やドイツのルートヴィッヒ・マクシミリアン大学とマウスの歯周靱帯を使った共同研究で、テノモジュリン(Tenomodulin)という分子が、歯周靭帯の発生と機能に関わることを新たに見出した。また、細胞接着を増強させることも明らかにした。歯周靭帯のテノモジュリン発現パターンと機能の一端が世界に先駆けて明らかにされた、本成果の意義は大きい。歯周靭帯はもとより、腱・靭帯組織の再生療法開発への足がかりとなることが期待される。東京大学医学部附属病院集中治療部小宮山雄介 博士東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻大庭伸介 特任准教授東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻鄭 雄一 教授■歯周靱帯におけるTenomodulin(Tnmd)の発現と機能「口ができる」メカニズム解明へ。口唇裂・口蓋裂の予防・治療に光。胎生期において、細胞同士を接着させ口の形成を促す遺伝子を、大阪大学大学院歯学研究科の阪井丘芳(さかい・たかよし)教授らの研究グループが発見した。口と顔の中心部は、胎児の時期に顔の左右から伸びる突起が接着し、癒合することにより形成されることが知られている。今回の研究では、マウスの口の形成過程で、口蓋突起の遺伝子発現のデータベースを作成し、その中から強く発現する細胞接着因子CEACAM1を発見。CEACAM1の発現は、T G F betaという増殖因子によって調節されており、抑制すると口蓋の癒合が阻害され、遺伝子を欠如させると口蓋癒合が遅れることが確認された。口や顔面の形成における口蓋突起の初期接着に重要な働きをしていることが明らかになったことから、CEACAM1の働きを維持することが、形成異常の予防の鍵となり得る可能性が見出されたと言える。口唇裂・口蓋裂は遺伝的要因と環境的要因によって発症し、日本国内においても600人に1人の割合で生じる難病の一つ。口蓋突起がうまく接着されないことで引き起こされ、言葉や摂食に障害が起きるという。「口蓋裂などは手術しか治療法がなかったが、胎生期にC E A C A M1をうまく働かせるような予防や治療への応用を目指したい」と話す阪井教授。さらなる研究の進展を見守りたい。大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室阪井丘芳 教授正常に癒合したマウスの口蓋を示す。癒合部では、緑色の上皮組織は消失している。CEACAM1を欠如したマウスの口蓋癒合が阻害されている様子を示す。癒合が完成せず、緑色の上皮組織が残存している。

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