Dentalism No15
10/32

8技術をしっかりと日本に取り入れて下さっていた、ということですよ。ですから悩んだ時期もありましたね。妊婦だった妻を東京に残して大金使って…と。副学部長だったランデスマン先生からは、9月からアメリカの補綴医のボード(専門医)コース2名の枠のひとつを空けてあげるから、また戻って来たらどうだとお誘いを受けました。大変名誉な話でしたし2年頑張ればアメリカの補綴の専門医になるわけで、向こうでオフィスを構えることもできる。そういう選択をしていたら今頃どうなっていただろうか、と想像することもありますが、当時は実際に渡米し経験を積んだことで、いろいろとすっきりした部分もありましたし自信もついた。自分が歯科医師としてどのようにやっていくかということについても沸々と意欲が湧いていました。――スタディーグループ「赤坂会」誕生の軌跡について教えて下さい。寺西 当時、アメリカの大学では、専門家たちが集まり患者さんの現状を共有して治療スタイルを練っていくカンファレンスがありました。僕も、そういうディスカッションは大事だと思っていたので、毎週、院内でスタッフ全員を集めたケースセミナーを開いていたんです。それが評判を呼んで、後輩や周りの先生方が見学させて欲しいと来院されるようになり、だんだん人数も増えていき、一旦、外部の人はお断りするようにしたところ、じゃあ自分たちのケースを持っていくので時間を作ってくれないか、という要望が出てスタートしたのがスタディーグループ「赤坂会」の始まりです。――寺西先生といえば「歯科五段活用」が有名ですね。寺西 あれは、阿部晴彦先生や舘野常司先生といった、メンターの先生方から教わったことを、自分なりに咀嚼し、実際に臨床経験を振り返っていく中で、実感したことを言葉にまとめたものです。聞くと見るとは大違い見るとやるとは大違いやるとできるは大違いできるとできたは大違いできたとできているは大違い研修会やセミナーで、師匠や先輩たちから教えてもらうことを、そのままコピーし受け売りを続けるのではなく、実体験として身に着け臨床の中で継続していかなければいけないということです。――寺西先生ご自身が課題とされていることはありますか?寺西 今、これだけ世の中でインプラントに関するトラブルの報告が多くなってきていることを見ると、それをどういうふうに真っ当な方向に導いていくことが我々にできるのか、と考えてしまいます。インプラントは決して悪いものではない。だからこそ、きちんとした教育を確立することが一つの課題だと言えるでしょうね。もう一つは、インプラント周囲炎に代表されるような、長期経過例におけるトラブルというのは現実的にあるわけで、それを自分のケースとして経験しているのは古くからやっている人間にしかわからないこと。どういう傾向があるのか、予防するにはどうしたらいいのか、そのあたりを教えていくことも課題にはしています。――「インプラント」か「入れ歯」かという選択に、先生は患者本位を貫かれると評判ですが。寺西 歯科医師は、歯科学のために臨床をやっているわけではないですよね。本来は、歯科も医科も、病んでいる患者さんを幸せにするろ仕事しなさいよ、と(笑)でも当時は、日本の歯科も過渡期でした。海外には情報がいっぱいあるんだけれど、今と違ってなかなか入ってこない。より多くを学ぼうとすれば海外へ行くしかないのか、と感じ始めていましたね。――今と違って、海外留学もなかなか大変な時代だったのでは。寺西 1ドル360円という固定相場が終わり、1ドル280円ほどの時代です。どうしたらいいか悩み、そういう道を開拓してこられた保母須弥也先生や、阿部晴彦先生といった方々に相談していたところ「短期間でも行ってみて、いろいろ垣間見てきたらいいんじゃないか?」と後押しされ、それから年に1~2週間はウエストコーストで研修を受けるようになりました。お金を貯めてUSC(南カリフォルニア大学)に6カ月ほど行けたのが1982年のこと。資金が尽きて帰ってきたという感じです(笑)語学は決して完璧ではありませんでしたが、技術は見てわかるものも多かった。ところが、行ってみて新しい発見があったかというと、実は意外にもそうでもなかった。先輩方が本当に新しい知識や的には随分広くなります。――歯科医師を目指されたのは、大学へ入学されてからということですが、ご苦労されたのでは?寺西 私はサラリーマンのせがれでしたから、歯科といっても治療された経験ぐらいしかなかったわけですから、そりゃあ大変でしたよ。ですからよく勉強しましたよ。でも勉強してみると意外と奥深い世界だと興味を持ちましてね。専門課程に入ってからは、さらによく勉強しましたね。成績も良かったので、大学側も大学院へ残る道を用意してくれたのですが、サラリーマンの父親にしてみれば、6年間も行ったんだから、そろそ

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です