Dentalism No14
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宮城県石巻市雄勝町。東日本大震災で18mの大津波に襲われた町は家屋の9割が被災し、死者・不明者250人に及ぶ甚大な被害を被りました。被災前4千3百人の人口が4分の1に激減、瓦礫は撤去されたものの、雑草の更地には廃墟となった建物が津波の爪痕を残したまま点在しています。2月26日そのひとつ、3階建の屋上を超えた津波で全入院患者と多くの医師や看護士が犠牲になった市立雄勝病院のお別れ会が開かれました。参列者の中に、昨年6月に開設された仮設の雄勝歯科診療所所長の河瀬聡一朗さん(35)の姿がありました。河瀬さんは、講師の職にあった松本歯科大学の歯科支援チームの隊長を務め、震災後直ちに南三陸の被災地に入りました。5次にわたる医療支援で73個所の避難所を回って治療と口腔ケアに尽力し、その後も毎月現地を訪れました。歯科もあった市立病院が被災して地域医療が壊滅した雄勝町では多くの住民が虫歯や重度の歯周病、口内潰瘍で苦しんでいたのです。「『千年に一度』の大災害に歯科医師として関わりを持ちました。震災で打ちのめされ口腔の悩みで困っている人を見過ごすことはできないと思いました」。河瀬さんは、市が公募していた仮設歯科診療所に赴任することを決意しました。大学講師の職を退き、家族とともに宮城に移住したのです。決断の背景には専門の障害者歯科や高校時代の阪神大震災ボランティアの体験から「弱い人、困っている人を助けたい」という熱い思いがありました。お年寄や障害者にも行き届いた診療をめざす河瀬さんの診療は被災地や高齢化の進む雄勝で大きな力を発揮しています。麻酔や全身管理下の診療はお手のもので水平のチェアで寝たきりの患者さんへの対応も万全です。節食・嚥下障害には内視鏡で症状を見極めて指導します。河瀬さんはスタッフや隣接する医科診療所の医師や地域の人々とともに、雄勝の復興再生、よりよい町作りをめざして「希望を育む歯科医療」を実践しています。「復興はまずは健康から。笑顔が広がる元気な雄勝をめざします」。自然体で笑顔がやさしい熱血漢です。28被災地に希望の歯科医療を菊池恩恵菊池恩恵(きくち・めぐみ)1953年岩手県出身。歯科医院の経営を支援する株式会社コムネット代表。http://comnt.co.jp/右が河瀬さん。筆者は4月末に仲間たちと一緒に南三陸・雄勝を訪問する予定です。

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