Dentalism No.10
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7私は許せなかったんです。矯正のグループで歯科医師会に申し出るべきだと進言したこともありました。とにかく許せなくて、一ヵ月経っても怒りが収まらずにいたところ、「じゃあ、君が正しい方法を教えたら?」と主人に言われ、何の準備もないまま11月には教える決意をしていました。そして1988年の2月に自宅の4階の和室に絨毯を敷いて「歯牙移動」の講習を始めました。その後すぐに主人も加わり1990年には主人による「包括歯科診療」コースがスタートしました。それが筒井塾の始まりです。筒井塾は、私の怒りから始まったんです(笑)――筒井塾で、照子先生と故・昌秀先生との臨床により整理された咬合の問題とは、どういうものだったのでしょうか。筒井 簡単なことでした。歯科は修復歯科「デンティストリー」から始まっていますが、本来は、病態に陥った原因を探る口腔医学「ストマトロジー」が必要だったということです。顎口腔系の病態を診断して、原因を取り除き、的確な修復措置を行うというバランスが大切なのです。かつて、15年間も舌痛症に悩まされ、筒井歯科医院で6回目の矯正をした患者さんがいたのですが、その人は身体のバランスを崩し、普通の生活もままならないような状態でいらっしゃいました。舌痛症の原因は「態癖」にありました。頬杖をつくという癖により、顔に力が加わりねじれ、咬合が改善されなかったのです。それ右/照子先生が考案したユニット「Tバージョン」は、ヨシダの「エクシードefX(エフェックス)M」のユニット背板が垂直に起き上がるタイプ。垂直な状態で咬合を診なければ、顎位が下がってしまい正しい咬合関係を知ることができないという信念のもと開発された。左/オペ室は無機質にならないようインテリアにも温かみのあるものが採用されている。ユニットは身長が180㎝以上あるような長身のドクターでも、立位での咬合診療が負担にならないよう高く上昇するようになっている。北九州市折尾駅周辺の都市計画と道路拡張に伴い移転を迫られることとなった筒井歯科医院は、2010年5月に、旧医院から道路を隔てた向かい側に移転したばかり。開業以来、何よりも大切にしてきた患者の治療記録や模型の数々は、真新しい院内でもきちんとファイリングされている。まで何軒もの歯科に通い、矯正をしたり、歯を削られたり、精神安定剤を出されたりしたそうですが、根本的な原因を取り除いていないのに、歯並びを矯正したり削ったりしても、舌痛症は治らないわけですよ。でも私は「なぜ、そうなっているのか?」を探るところから診るので、すぐにわかりました。2年ほどで舌痛症は治りました。――歯科には病態の原因を探す学問がないということでしょうか?筒井 生理学的咬合論のように基礎的な研究はありますが、その臨床応用がなかったんです。歯科の2大疾患と言われる、むし歯と歯周病についてはだいぶ明らかになっていますが、第3の疾患「力」については、まだまだですね。むし歯や歯周病と違って直接見えないですし、生活習慣がどうかかわっているかなど見えにくいものがある。でもそこを今まで診てこなかったからわからなかった問題も多いんです。内科だったらまず聴診器をあてて、血圧を測り、血液検査をし、レントゲンをとったり、CTをとったり、診察のステップがあるけれど、歯科で噛み合わせや関節症にはきっちりとした検査がない。本当はちょっと調べればわかる話なんですけどね。

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