Dentalism No.10
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5今年6月に亡くなったピーター・フォークといえば「刑事コロンボ」。イタリア系の人情派のイメージだが、実際はロシア系で、冷徹な殺し屋役で世に出たのだとか。そんな彼が、コロンボのゆったり感はそのままに、破天荒なスパイを演じたのがこちら。財務省の輸送車が、巨大磁石で吊り上げられるという大胆な手口で襲われ、紙幣の原版が奪われた。原版は謎めいた男ビンスに手渡され、強盗団は明日中に150万ドルを支払えと言う。「無理だよ!日曜が息子の結婚式で、相手の両親に会わなきゃならないんだ」一方、花嫁の父であるシェリーは真面目な歯科医。結婚式の間近まで挨拶にこない親に不信感を募らせているのに、ビンスは約束の時間に遅れて来た挙句、壮大なホラ話で皆を煙に巻き、地下室でこそこそと電話までかける始末。「あんな怪しい男と親戚にはなれん」と、シェリーは結婚に猛反対。しかし、可愛い娘に泣かれては、お父さんもしぶしぶ承諾。翌日、突然訪れたビンスに頼まれ、鞄を取りに行ったシェリーは二人組に銃で襲われて危機一髪。ビンスを問い詰め、彼がCIAのスパイで、偽札事件を解明するために原版を盗み、ある国の将軍に売り込んだこと。報酬をめぐって強盗団に命を狙われていることなどを聞かされ、ビックリ仰天。成り行きで、ビンスと共に南米のとある国へ向うことになるのですが、到着後すぐに何者かの銃撃を受け、必死で逃げ惑うはめに。だだっ広い飛行場の滑走路で撃たれまくる二人。「ジグザグに走れ!」と叫ぶビンスと、律儀にぐるぐる同じところを走り回るシェリーの掛け合いが可笑しい。シェリーはCIAに救助の電話をかけるが、ビンスは精神疾患でクビになったと聞いて唖然、呆然。もう何も信じられないというシェリーを置いて、ビンスは一人で将軍のもとへ。しかし、強盗団が後を追うのを見たシェリーは、車めがけて大ジャンプ。歯科医らしからぬ大胆さでビンスを救い、強盗団との派手なカーチェイスは、ハイウェイを暴走・逆走・大爆走。バナナを満載したトラックの荷台を撃ち、散乱したバナナで悪党の車はスリップ。バナナで転ぶのは人間だけじゃないんですね。独裁者である将軍に、原版を2千万ドルで売り、二人はホッとひと息。しかし、「これで世界は私のものだ」と高笑いする将軍は二人の銃殺刑を命じ、「名歯科医のシェリーを殺したら、ニューヨークの人がみんな虫歯で死んでしまう」と頼むビンスの言葉もむなしく、あわや銃殺… の瞬間に、CIAがなだれ込んで一件落着。敵を欺くには先ず味方から、って訳ね。どさくさに紛れて5百万ドルずつ手に入れた二人は、お揃いのタキシードで結婚式にヘリで駆けつけ、息子と娘に百万ドルの結婚祝いをプレゼント。ビンスはスパイを引退することを決めました。黒スーツに中折帽とメガネでスタイリッシュに登場しても、どこか庶民的な生活感を滲ませたピーター・フォーク。私はコロンボの、いえ、あなたの大ファンでした。文/桂木良子歯科医は映画がお好き?「あきれたあきれた大作戦」 1979年米国 アーサー・ヒラ―監督 ピーター・フォーク、アラン・アーキン主演 イラスト/楮本恭子桂木良子/東京都出身。著書には、読んで美味しい映画のお話『シネマレストラン』がある。趣味は映画とスペイン語。コーヒーと犬が好き。スパイも顔負け? 歯科医が大活躍!

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