Dentalism No.9
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19すけど、いつか伝統となるような、続く料理やと思うてます」基本はあくまでも日本料理。ただ、既成の枠組みにとらわれることなく素材の見立てや仕立てを試行錯誤し、新しい食材や調理法も積極的に取り入れて料理を進化、洗練させていく。伝統を作ることと挑戦を繰り返すことが、何ら矛盾しないということが、木乃婦の料理からは素直に感じられる。数々の名物料理が次々と誕生する背景には、拓児さんの飽くなき好奇心と探究心、そして、百二十坪にも及ぶ広い厨房の各持ち場で、司令塔の采配に応える四十名近くの料理人たちの素晴らしいチームワークがある。優れた歯科医療が国境を越えて評価されるように、人の心を打つ料理もまた、様々な垣根を越えて支持を集めていくのだと思う。器あわせにも独特のセンスが光る。南米原産のフルーツ「チリモヤ」を使ったデザートは、アンティークのキャビアスタンドに盛り付け器に新しい息吹を与える。胡麻豆腐の食感が以前にも増して滑らかになったと裏地さんも気づいた名物料理の一つ「胡麻豆腐とフカヒレの鍋」。使用する道具を変えてみたことが食感と香りの向上に繋がったという。いまや定番となった料理さえも少しずつ進化している。左上/器の見立てにも造詣が深く、出物があれば方々から声がかかるという高橋拓児さん。厚みのある六角ガラスの器も最近手に入れたという年代物。盛り付けられた造りは見た目も涼しげ。右上/京都の夏が凝縮されているかのような鱧椀。下/これで一人前?と誰もが感嘆の声をあげる雲丹と鮑の薄造りジュレ掛け。木乃婦には、大小十三部屋の個室があり、それぞれの席の要望にきめ細かく応えられるだけの食材が豊富に揃っている。

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