Dentalism No.8
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材の良さを最大限に引き出すべく、あえて余分の手を加えず、しかも滋味にあふれていて、野菜も魚も豆腐も汁も米飯も一流の仕事であった。食べ物を美味しそうにいただいている姿ほど幸福な様子はないというが、その夜の私はさぞかしほくほくと幸福な様子をしていたにちがいない。 酒は黒龍の吟醸を二合。料理以上には決して目立たない、つつましやかな風味の名酒である。こういう酒を薦めるところにも、あさばの見識がある。 古池に面して拵えられた野天風呂は豪壮な中にも拵えものとはおもえぬ風雅さがあり、湯口の近くはやや熱いが、下手のあたりはちょうどよい湯加減である。そこに体の半分をひたしたまま、私は考えともつかぬ考えにとらわれながら、いつまでも茫然としていたのだった。 帰り際、靴を揃えてもらいながら、私は言った。 また、来ます。 世辞でもなんでもなく、本当に私は心からそう思った。あさばで過ごした夕と朝。それは私を癒し、私を慰め、私の汚穢をきれいに洗い流してくれた実にかけがえのないひとときだったのだ。あさば静岡県伊豆市修善寺3450-1TEL(0558)72-7000 FAX(0558)72-7077※小人の宿泊は7歳より承ります。1.新しく開設されたスパでは極上の癒しが得られる。2.自然石に囲まれた野天風呂は昭和初期に造られたもの。風にそよぐ竹林を眺めながらの入浴は、まさに至福の時間。3.眺望も素晴らしく、ゆったりと寛げる「萌葱」の間。4.季節によって趣向が凝らされる料理の数々。春は太刀魚と田芹の鍋が格別。5.名物料理のひとつ、穴子の黒米ずし。修善寺で栽培している黒米を、駿河湾で獲れた穴子で包んだもの。黒米のもっちりとした食感と、とろけるような穴子の歯ざわりのバランスが絶妙だ。1234521

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