Dentalism No.8
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 虫歯や歯周病などの病原細菌をほぼ死滅させられる新たな殺菌法を、東北大大学院歯学研究科の菅野太郎(かんの・たろう)助教らのチームが開発した。 菅野助教らの研究グループでは、口腔内感染症を活性酸素の一種を応用して治療を行う研究をしている。今回は、過酸化水素の水溶液に目に見える波長のレーザー光を照射し、活性酸素の一種「ヒドロキシルラジカル」を生成。その殺菌効果は、通常口腔内で消毒剤として用いる過酸化水素の殺菌効果よりも何千~何万倍も強いことが分かった。また、この殺菌技術では、歯周病や虫歯を引き起こす病原細菌を3分以内に99・99%以上死滅させたという。 さらに、研究チームは精密機械製造「リコー光学」などと連携して歯周病用の治療機器の開発も進めている。活性酸素による殺菌は人体への影響はないとみられ、新しい治療器は従来より歯周治療の問題であったプラークの取り残しなどにも対応。いち早くの実用化が待ち望まれるとともに、治療が難しい歯周病の奥深い病巣を殺菌することなどへの応用にも期待が高まる。 岡山大学と株式会社グライエンス(名古屋市)の共同研究チームは、代表的な齲蝕原因菌であるミュータンス菌の唾液でコートしたヒドロキシアパタイト板への付着とバイオフィルム形成が特定のレクチンにより抑制され、さらにミュータンス菌が特定の糖鎖を認識して唾液のタンパク質と結合することを明らかにした。 本研究では70種類のレクチン用いた網羅的解析によって、ミュータンス菌の付着を抑制するレクチンと初期付着に関与する唾液中の糖鎖構造を検討。結果、マッシュルームに由来するレクチンを唾液でコートしたヒドロキシアパタイト板にさせると、ミュータンス菌の付着及びバイオフィルム形成を強く抑制していた。また、マッシュルームレクチン以外でも、コア1という構造を認識するレクチンを作用させるとミュータンス菌の付着抑制を示したことから、コア1構造認識レクチンがミュータンス菌のバイオフィルム形成を抑制する傾向をもつことが示された(図1 走査電子顕微鏡の観察 参照)。また、コア1糖鎖は他の糖鎖よりもミュータンス菌が強く結合し、解離しにくいことも確認。このコア1を認識するレクチンはキノコ類や海藻に含まれることが知られている。 天然物に多く含まれる物質であるレクチンは毒性の心配が低く、また、現代人のエチケット嗜好にも適した口腔感染症予防剤として期待されている。キノコや海藻から安価にレクチンを含有する抽出物の製造技術開発も進められており、今後は健康食品や医薬部外品への展開にもつながりそうだ。掃除が困難①フリーラジカル殺菌と超音波スケーラーを併用することで、取り残しプラークに対応②低濃度過酸化水素、可視光レーザーを用いることで、安全性を確保③装置のコスト低減と小型化を達成することで、歯科業界に広く普及東北大大学院歯学研究科菅野太郎 助教■新しい治療器の特徴■従来の歯周病治療法とその問題点【治療法】超音波振動による物理的な細菌性プラーク(歯垢)の除去【問題点】最深部のプラークおよび歯石の取り残しが、治療不全や再発につながる超音波スケーラー同研究科伊東 孝 院生岡山大大学院医歯薬学総合研究科高柴正悟 教授唾液表面をマッシュルームレクチンでブロックすることにより、バイオフィルム形成が阻害されたミュータンス菌が付着して形成されたヒドロキシアパタイト板上のバイオフィルム図1 マッシュルームレクチンによるバイオフィルム形成抑制DentalismNews&Topics虫歯や歯周病菌を99.99%死滅。画期的な治療法の実用化に期待。マッシュルーム由来の天然レクチンに虫歯菌の結合を抑制する働きを確認。19

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