Dentalism No.6
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る機会があったのですが、25年ぶりぐらいにお会いしたのに、覚えていてくださったのは嬉しかったです。僕は、まだ駆け出しの頃で、先生も「歯周病」への取組みを本格的に始められた頃でね。今でこそ「歯周病」は全身疾患との関係も取りざたされるようになっていますが、その頃は、まだ始まったばかりでした。―名歯科医を紹介した著書もありますが、最も素晴らしい名歯科医といえば?松井 どの先生も甲乙つけがたいですよ。みなさん本当に素晴らしい先生方ばかりです。 顎関節症の和気裕之先生、インプラントを日本に紹介された小宮山彌太郎先生。人工的に骨を増やしてインプラントを埋め込むサイナスリストの菅井敏郎先生なんかも、若いのにすごいなぁと思いましたね。歯周病治療の弘岡秀明先生。挙げたのは皆さん現役の先生です。―名歯科医の条件とは何だと思われますか?松井 歯科に限らず、今後、日本の医療現場では、ますます「インフォームドコンセント」が重視されてくるでしょうね。わかりやすい言葉で、患者に選択肢を示すことが大切です。優秀な先生になればなるほど、説明が簡潔で、患者も一度で理解できる。今は、そういうことが求められていると思います。―取材を通じて、歯科がかかえる問題に遭遇したことは?松井 患者さんの中に、歯科を転々とまわって、そのたびにどんどん歯が悪くなっていく人や、入れ歯があわず、ポケットにいっぱい入れてあちこちの歯科をまわっている人がいました。―ドクターショッピングでしょうか。近頃よく耳にしますね。松井 一部ではもう行われてはいますが、歯科で、そういう患者さんを診たら、精神科の先生なんかと、もっとリエゾンしていって欲しいと思いますね。そうすれば、もっと救われる人が増えてくると思います。―医科と歯科の連携は、多くの方が指摘されており、実際に取組みが始まっていますね。松井 もしかすると近い将来、医科の先生、歯科の先生という区分けはなくなるかもしれませんね。歯科では医学部では教えていないような疾患を、より詳しく教えているケースもあるぐらいだし。 そこまでいかなくても、今、日本には5000強の総合病院があるけれど、口腔外科がある病院の方が少ない。しかし、そういうところや、介護施設で歯科の治療やケアができるようになれば、歯科の将来は決して悲観すべきようなものではないと思います。―日本歯科医師会が行っている「生きがいを支える国民歯科会議」に参加されたご感想は?松井 昨年の8月と今年の2月に参加させていただきましたが、健康寿命を延ばす歯科医療の重要性を実感しました。 長崎の角町正勝先生のプレゼンテーションが印象深かったです。角町先生は、介護の現場と一緒になって家庭に入っていき、手探りで歯科の訪問診療を始めた頃のお話をしてくださいました。 末期癌の男性で、あと1週間もつかどうかという方が、食事ができなくなったと聞き、入れ歯や歯の処置してあげたところ、ぶどうを一粒食べることができたそうです。患者さんは「おいしい。やっぱり口から食べるのが一番や」と言って、その2日後に亡くなったそうです。最後の最後まで自分の口で食べることが、いかにかけがえのないことなのかを改めて実感しました。―高齢化する日本では、介護の現場や家庭の中にも、歯科の可能性が残されていると?松井 まだまだ必要なところに、必用な歯科医療は行き渡っていないということです。歯科は、大学が定員割れを起こしたり、倒産するクリニックがあったりして、なかなか大変な時代だとは思いますが、どうか高い志で、最後までQOLの高い生活の実現を手助けしていただきたいと思います。 医療現場で出会ってきた「名医」たちに共通する「高い志」に感銘を受け、多くの医療人にもそれを期待したいと締めくくった松井宏夫氏だったが、「自分の仕事が、人の役に立って入ると思えることは幸せなこと」と語る彼こそが、医学ジャーナリストとして誰よりも誇りを持って仕事に向き合っているのではないかと思えた。15Prole 松井宏夫(まつい・ひろお)1951年富山県出身。中央大学卒業。名医本のパイオニアであり、最先端医療をはじめ医療全般のわかりやすい解説にも定評がある。テレビやラジオ、新聞、雑誌、講演などで幅広く活躍。テレビの監修・及び出演番組は『たけしの健康エンターテイメント!みんなの家庭の医学』(朝日放送)、『これが世界のスーパードクター』(TBS)ほか多数。日本医学ジャーナリスト協会副理事長。『この病気にこの名医PART1・2・3』(主婦と生活社)をはじめ著書も多数。

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